杜氏

【English】
Master brewer(s)

農業、林業、漁業などに従事する人達の冬季の仕事として、全国各地方で季節従業員として酒造に従事する習慣が昔からある。この酒造工を蔵人といい、その最高責任者を杜氏と呼ぶ。かつては杜氏がその酒造場に必要な人員を集めて酒造に従事した。杜氏は酒造りの技能に優れているだけではなく、労働者達をたばねていく統率力、判断力、管理能力に秀でた人格者であることが要求される。そのため杜氏は、酒造場内では経営者からも労働者からも尊敬の念をこめて「おやじ、おやっさん」と呼ばれる。

全国にはいくつかの杜氏集団があり、各々独自の技術を誇りにして酒造りに従事している。各地の杜氏の呼び名は出身地の名称を付けて呼ばれ、山内杜氏(秋田県)、南部杜氏(岩手県)、越後杜氏(新潟県)、能登杜氏(石川県)、糠杜氏(福井県)、但馬杜氏(兵庫県)、丹波杜氏(兵庫県)、備中杜氏(岡山県)、広島杜氏(広島県)、出雲杜氏(島根県)、九州酒造杜氏(九州地方)などが存在する。

現在では、季節従業員の杜氏が少なくなり、通年社員の醸造責任者、工場長を杜氏と呼ぶことも多い。また各杜氏組合が、酒造技能に優れ、一定の資格を有するものを「○○杜氏」と認定したり、日本杜氏組合連合会が一定の有資格者を「日本酒造杜氏」と認定することも行われている。