単発酵・単行複発酵・並行複発酵
単発酵・単行複発酵・並行複発酵は、酒類の醸造方法の分類の上で用いられる用語である。醸造を行うには、糖質原料をグルコースに分解する「糖化」と、グルコースをアルコールに変化させる「発酵」の2つの生化学的作用が必要である。
単発酵とは、もともとグルコースを多量に含む原料を用いて、糖化を行わず発酵のみを行う発酵形式をいう。ワイン果汁を原料として発酵させるワイン醸造が典型である。
単行複発酵とは、デンプン原料を用いて初めに糖化を行ってグルコースを得て、その後発酵を行わせる発酵形式をいう。麦デンプンを麦芽の糖化酵素で分解して麦汁を作り、麦汁を用いて発酵させるビール醸造が代表的である。また生酛系酒母や高温糖化酒母も、初期に糖化させてから発酵させるので、ある種の単行複発酵と言える。
並行複発酵とは、デンプン原料の糖化とアルコール発酵を同時並行的に行わせる発酵形式をいう。清酒 醪の醸造が典型である。並行複発酵では、徐々に糖化が進み、生じたグルコースも発酵によって順次消費されていくので、グルコース濃度が他の発酵形式に比べて低レベルに維持される。このため酵母に対する濃糖ストレスも軽減され、高アルコール生成が可能となる。
清酒は、醸造酒(つまり蒸留しない酒)としては世界中のどの酒よりも高アルコールである。この理由は、並行複発酵を行っているからに他ならず日本酒醸造において特筆すべき技術的特長と言える。