灘の寒造り・寒造り
酒造りは古く季節を問わず造られていたが、江戸初期においても秋の彼岸から始まり春に至る長期にわたって行われていた。そして造る季節の順に製成される酒に区分がつけられていた。すなわち秋の彼岸すぎから仕込む新酒・間酒、初冬に仕込む寒前酒、厳冬に仕込む寒酒、春先に仕込む春酒の5種類である。
寒造りと称するのは冬至の頃に酛を始め、年間の最も寒い季節を選んで行われる酒造りである。この時期、低温により雑菌の繁殖を抑えられ、醪の温度の制御もしやすかったため、醸し出される酒の品質は最良であった。江戸時代(1603~1868年)はこの酒を寒酒と呼び、価格は最高であり、寒前酒がこれに次いだ。
寒造りは江戸中期に完成され、灘は寒造りを主体とする酒造法を積極的に進め、酒質の向上をはかった。灘酒興隆の一因はここにもあるとされている。
因みに暦上の「寒」は小寒から節分までの約30日をいい、通常1月5~6日より2月4~5日までの期間を指す。